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心と体、そして内視鏡

[2024.06.12]
 日曜日は河野智聖先生からお知らせいただきBSの放送大学を拝聴した。’身体一体科学´。和の心と体(身体)の運用の伝承者である河野智聖先生、安田登先生、内田樹先生が生物科学の跡見順子先生と共に熱く語っておられた。河野先生は野口整体の大家であり施術をしていただいた経験もあり、また先生が制作されたYouTubeにも出演させていただいた(ブログ1/22,1/29参照ください)。
内田 樹先生は今知らない人のいない知の巨人であり私の合気道の師匠でもある。身近な方々の語りはより深く私の中に響いた。
河野先生から日本人の丹田中心の身体運用の特徴が特に腰椎の部位に関するモデルによる実践を交えながら語られた。安田先生からは能は侍は必ず修めたものであり、黄泉の国の物語ゆえに目に見える長はおらず視えないものと通じて行われること、上達ではなく熟成であることが語られた。内田先生からは頭でマネジメントせず我執を捨てること、身体に敬意と好奇心を持つことが語られた。お三人ともに呼吸の大切さ、まず吐くこと​に重点を置くことを語られていた。
跡見先生とお三人のお話を聞いていると日本人の古(いにしえ)からの身体習慣が道理にかなった素晴らしいのもであることが今の科学で証明されつつあり、私たちが最高のパーフォーマンを実現するKeyは心の状態であり呼吸がその要になると教えていただいた。
 
月曜日は3年に一度来られる60代後半の男性の大腸内視鏡を行った。2016年に神大のT先生に上行結腸の9㎝大の腫瘍(粘膜内癌:ステージ0)を切除いただいており、その後の他院のfollowでは盲腸まで到達できず2017年から当院に来られている。つまり盲腸まで挿入しているのはT先生と私だけだ。
 
2017年に来られた時は盲腸まで20数分で挿入し16mmを最大とするポリープを計6ヶ内視鏡的に切除した。2018年に来られた時は頑張ったが脾彎曲までの挿入しかできず2019年に無料で再検査し、やはり20数分で盲腸に到達し複数のポリープを切除した。2021年も同様の結果であり通常盲腸挿入が3-5分の私にとって最も挿入が難しい症例だ。
 
当院は自由診療のみの内視鏡専門クリニック(料金は保険診療より相当高い)であり大腸内視鏡適応症例で盲腸挿入が出来なかった場合必ず無料で再検査を受けていただく、盲腸までの挿入の保証は自由診療を行っている内視鏡医としての矜持でもある。2006年に開院以来内視鏡適応症例(腹膜炎などを除いた例)で盲腸までの挿入ができなかった例は2018年のこの方のみで2019年の再検査で盲腸挿入を完遂しているため開院以来盲腸挿入が不可能であった患者様は一人もいない。
 
日本人の古来からの身体運用が内視鏡診療に応用できないかと日々試行錯誤している私としてはこの超困難例との邂逅は日々の精進の証となるまたとないチャンスであり、前日の素晴らしい講演を踏まえて呼吸を意識しながら出来るだけ無駄な邪念を捨てて内視鏡操作に集中した。
 
メガコロンであり特にS状結腸が長く、内臓脂肪がまとわりついて重い大腸であり内視鏡の硬さ調整(硬度可変)を利用してやはり20数分で盲腸まで到達した。5mm~2mmまでの腺腫様ポリープ(癌になる可能性を秘めた良性ポリープ)を計8ケ切除した。患者様は代謝のいい鎮静薬を使用しているためぐっすり寝てすっきり醒めてニコニコしながら結果をお聞きいただいた後クリニックを後にしていただいた。当日車の運転も可能。おそらく検査は次も3年後、これで大腸癌は心配無用。
 
内視鏡の診療は一期一会、まさに心の状態が内視鏡診療の要であることを経験させていただいた。呼吸を整え、我執を捨て静かに目の前のものに集中する。前日の素晴らしい講演拝聴の余韻は明らかに私に良い影響を与えていた。河野先生ありがとうございました。
 
内視鏡も技術ではありません、まず心です。だから内視鏡も合気道もやめられないのです😊
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