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大腸癌

今日本人は一生で考えると二人に一人が癌になり、三人に一人が癌で亡くなります。その癌の中で大腸癌は現在本邦では男女合わせると最も多い癌です。年間約100万人が癌にかかる中でその約15%、15万人が大腸癌です。大腸癌による死亡者数は男女合わせると肺癌に次いで第二位、男性では第二位、女性では何と第一位になっています(図1)。おわかりのように大腸癌は現在最も身近な癌であり最も重要な病気の一つです。そしてこの40年で大腸癌なる人の数は約6倍になっています(図2:なぜこんなに増えているのでしょうか?この理由については別にお話いたします)。年齢的には40代から増え始め年齢が増すごとに罹る人の割合は増えてゆきます(図3)。癌で命を奪われないための現在の一般的考え方は早期発見・早期治療でありこれはもちろん大腸癌にも当てはまります(もっと重要なことは「癌にならないためには」ですがこれについても別にお話いたします)。仮に大腸癌に罹ったとしても早く発見され適切な治療がなされれば現在非常に高い確率で完治できます。癌が完全に治った一般的指標は発見・治療後の5年生存率で表されます。私のような消化器内視鏡医が扱う消化管の癌(主に食道、胃、大腸で小腸癌は非常に稀)の中でも最も治りやすいのが大腸癌なのです(図4)。消化管は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層の三層構造になっており、最初大腸癌は最も内側の粘膜層(消化管の表面)から発生します。最近の内視鏡は非常によく視えるようになっており私が常用している先端に顕微鏡が付いている内視鏡(拡大内視鏡)を使用すれば最高解像度5ミクロンレベル(1/200ミリ)の観察も可能になり癌は必ず見つけられると言っても過言ではありません。癌は粘膜層に留まっている間は周囲に影響を与えませんが二層目の粘膜下層以下に入り込んでゆく(浸潤)と全身につながる血管やリンパ管が豊富に存在するため血流やリンパ液の流れに乗り他臓器や全身に散らばりいわゆる転移を起こします。癌が進行するというメカニズムです。この段階を分類したのがステージ分類でありステージが進むほど癌の完治は難しくなります(図5,6)。ステージ0の段階で発見できれば癌は他に浸潤・転移しておらず粘膜層内にのみ存在している(粘膜内癌)ため粘膜層と粘膜下層を同時に剥がしとる内視鏡的治療でほぼ100%完治可能です。消化器内視鏡医が目指すのがこの究極の早期発見・早期治療です。内視鏡的切除の効能は何といっても消化管表面(粘膜下層まで)のみの切除(剥離)であり最も低侵襲(体に負担がない)な治療のため外科的切除のように臓器の欠損を生じないことにあります。転移の可能性のあるステージ1以上の癌になると腸管周囲の転移巣(リンパ節など)も切除しなくてはならず大腸の一部が無くなり、たとえ癌が完治したとしても一部が欠損したことによる便通障害や手術による生じた癒着による腸閉塞が起こる可能性があり一生つき合わなくてはなりません。つまりステージ0の段階でみつけて内視鏡的に切除・完治するのが最も理想的です。ステージ0のレベルの癌はまず症状を起こさないため無症状で内視鏡を受けた時に発見されます。最も低侵襲の究極の早期発見・早期治療を実現するためには癌年齢である50歳、可能であれば40歳から無症状であっても大腸内視鏡検査を受けることがお勧めです。つまり大腸内視鏡検査を受けさえすれば今一番多い大腸癌はまったく怖くないのです。最後に大腸癌はほとんどの場合大腸ポリープから発生するため定期的に大腸ポリープを切除することにより確実に予防可能です。これについては大腸ポリープの所でお話しします。

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