OTSC CLIPによる日帰り内視鏡的瘻孔閉鎖術
中年男性。以前から軟便傾向で2024年4月当院で大腸内視鏡施行。前処置が悪く便汁が残る状態で丁寧に洗浄しながら大腸内観察を行っていると横行結腸に2ヶ所の近接小腸に通じる瘻孔を発見した。
小学生低学年の頃腸閉塞で緊急手術を受けておられ小腸切除の既往をお持ちだった。内視鏡の画像には2ヶ所の瘻孔の周囲を取り囲むように瘢痕ラインが認められ術後の合併症による瘻孔と推測された。ご本人によれば手術前まではふっくら体型であったが手術後痩せ体型になったとのこと。本来全小腸で吸収されるべき食べ物の栄養の一部が途中からショートカットで瘻孔を通じて大腸に排出されることによる栄養吸収障害と推測された。
2024年暮れ頃から味覚異常、下腿浮腫などの栄養障害が顕著になったため2025年2月OTSC CLIPによる瘻孔閉鎖術を行った。手技は決して難しいものではなく2ヶ所共に瘻孔閉鎖術は成功した。術後約2カ月の現在栄養障害は改善しておりどんどん元気になっておられる。
OTSC CLIPはドイツで開発された全層縫合器であり消化管の出血止血、穿孔・瘻孔の閉鎖に用いられる。本邦では2018年から使用が開始されている。内視鏡先端に装着したフードの上にCLIPをセッテイングし病変部をフード内に十分吸引した状態でCLIPをリリースし手技は完了する。
CLIPはニッケルチタンの形状記憶合金であり病変部を強力に持続的に把持可能である。今回の例のような小腸・大腸瘻は非常に稀だが大腸と泌尿器系臓器、また大腸と婦人科系臓器との瘻孔は術後合併症として時々認められる。以前は外科的治療しかなく、しかも外科医にとっても術後の合併症に対する再手術であり難易度が非常に高く患者様にとっても外科医にとっても決して好ましいものではなかった。つまりこのCLIPの出現はまさにGame changer と言える。
泌尿器科の手術(特に前立腺)後の膀胱・大腸瘻や経腟分娩後に生じる膣・大腸瘻、また大腸憩室が膀胱に穿孔した膀胱・大腸瘻などの病態に日帰りで簡単に出来る施術の出現は低侵襲で目的が達成される内視鏡治療の真骨頂である考えられます。保険診療では必ず数日間の入院が必須となりますが(施設の収益のため)当院では日帰りで実施可能です(自由診療ゆえに)。状況により入院が必要な場合は提携病院に術後入院していただき対応いたします。日帰り瘻孔治療をご希望の方、是非当院にご連絡、ご相談ください。