PERFECT DAYS
PERFECT DAYS’を観に行った。静かで寡黙な映画。時々さざ波は立つが流れるのはヒトの生活から発せられる音と周りの自然が発する音。主人公平山(役所広司)の目に映る世の中の一瞬一瞬を、観る者がシンクロして体験できるようにカメラは動いて行く。余りにも静かゆえに観るものは人の声に徐々に飢えて行く。そこにすっと入り込んでくるのが平山の車のカセットテープの音。ビートルズ世代の私には馴染みがある音源が静寂の中に入り込み、突然消えてゆく。それが繰り返される。選曲が素晴らしく、役所広司の顔の表情と共鳴して平山の心の内が観るものに染み渡る。ヴィム・ヴェンダースはクリント・イーストウッドと同じようにシーンと音のマッチングの天才だ。中でも青い魚(日本語:金延幸子 https://youtu.be/YHGjp8csyD0?si=D4SC7LICeQUKlfg )、Feeling Good(Endingの曲:ニーナシモン https://youtu.be/BNMKGYiJpvg?si=Ym-kYPXxxd9t5Ibk )は特筆だ。私はこの静寂と素晴らしい音源の巡り会いにノックアウトされた。平山の夢の情景は過ぎ去った過去、私にはヴェンダースが尊敬し影響を受けたであろう日本の名監督たち、小津安二郎、黒沢明・・・へのオマージュと感じた。‘今、今、今、今度、今度、今度’と姪っ子のニコが口ずさみながら平山と自転車でランデブー。今この一瞬を幸せに生きるのは富でも、名声でも、地位でも、名誉でもなくただただ自分次第。ヴェンダースが伝えたい、そのメッセージを伝えるのに最もフィットする場所が東京にあったのだ。発したひと言の言葉、抱擁で主人公平山の過去はあぶり出しの様に観るものに伝播する。足すのではなく、どこまでもそぎ落として作られた映画。まだ1月やのに今年一番は決まった感じ。皆さん、お勧めです。そしてこの映画は‘Don’t think, just Feel !’そういう映画です(へへ)。